働き方の未来インタビュー Vol.1 マナコーポレーション
未来の働き方を発明するために、新しい働き方にチャレンジしている人や、企業を訪問、インタビューをする「働き方の未来インタビュー」。
第1回目は金沢市を中心に石川県と富山県内に美容室等を23店舗展開している、
株式会社 マナコーポレーション 代表取締役 瀬川 憲章様さんにお話を伺いました。
今回の訪問先はマナコーポレーションさんのオフィスではなく、同社が運営してる金沢市有松町にある「美容室きらら」さんの店舗です。美容師さんのインタビューを含めて肌で感じたお店の雰囲気をお伝えしたいと思います。
さて、美容室とコンビニどっちが多いと思いますか?
平成27年度(2015年)のデータで比較してみましょう。
コンビニの店舗数=約 55,000件
美容室の店舗数 =約240,000件
なんと美容室はコンビニの約5倍。しかも、前年に比べて約2,700件も増えています。
※ちなみに経営者の高齢化等が理由で廃業するケースが多い理容所(散髪屋さん)の数は年々減少し、27年度は前年に比べると約2,000件も減少しています。
人口減少時代にも関わらず、美容室の数が増えてるということは、競争が激化しているのは明らかです。美容室同士の競争に勝ち抜くために、経営者から美容師さんに対しては様々な課題が与えられていることでしょう。技術力のアップ、サービス力のアップ、コミュニケーション能力のアップ、客単価や来店頻度を増やすための営業力のアップ・・・。
その結果、長時間労働が当たり前になり、多くの美容室がブラック企業だと揶揄されているのが現状だそうです。
一方で、今回訪問した「美容室きらら」さんは、日曜日、祝日が定休日。営業時間は8:30~17:00。残業はほとんど無いそうです。ワークライフバランス優良企業として表彰されてもおかしくないようなホワイト企業ですね。本当なんでしょうか?
まずは、美容師さんにお話を伺ってみました。(記者=山崎ジョー吉)
(記者)
「こちらにお勤めになって何年ですか?」
(美容師さん)
「学校卒業後、美容師として働いていたのですが、出産を機に退職。10年間ブランクの後、こちらで復帰し、現在7年が経過したところです。」
(記者)
「ブランクが10年間もあると、復帰に対する不安などはありませんでしたか?」
(美容師さん)
「もちろん、不安だらけでした。でも、瀬川社長が親身になって相談に乗ってくれ、不安な要素を一つ一つ解消してくれたんです。そのお陰で、美容師として無事に社会復帰することができました。特に、美容師としての腕の感覚を戻すためのに練習の時間や機会を提供してくれるたのが、自信につながったんだと思います。」
(記者)
「このお店は何人の美容師さんで運営されているんですか?」
(美容師さん)
「4人の美容師で回しています。ちなみに、全員子育て中のママです。」
(記者)
「学校の行事などのお休みや、病気などの急な呼び出しが学校からあったときなど、シフト調整はどうされているんですか?」
(美容師さん)
「休みが取りづらいということは一切ありません。全員が子育中で、お互いの立場を理解しているので、急なシフトチェンジにも対応できるんです。お陰で子供と一緒に過ごす時間も増えました。」
(記者)
「指名で予約が入っている美容師さんが急な休みになった場合などはどうしているんですか?」
「お客さんに連絡をし、代わりの美容師が担当するか、日程を変更するかの連絡を必ずしています。お客さんも美容師さんの事を理解してくれている同世代の方が多いので、クレームになるケースはほとんどありません。」
(記者)
「飛び込みの新規のお客さんに対してはどう対応しているんですか?」
(美容師さん)
「どんなケースでも、スタッフが全員で協力し対応しています。それは単に仲が良いというよりも、お互いに尊敬し合っているからこそ実現できるんだと思います。」
(美容師さん)
「とにかく、お店に来るのが楽しいんです。楽しくなかったら7年間も続きません。時間の自由があり、好きな仕事ができる。大好きなんです!」
美容師さんには、笑顔でお話を聞かせていただきました。手の空いた美容師さんも、近くにきてうなずいたり話に加わるなど、雰囲気の良さを感じました。
ところで、このような職場づくりをどうやって実現、維持しているのでしょう?
瀬川社長にお話を伺いました。
(記者)
「まず、瀬川社長の一日の行動を教えていただけますか?」
(瀬川社長) 「朝5時に起きて、勉強しています。その後の行動は日によって変わりますが、店舗を回っていることが多いですね。」
(記者)
「店舗にはどのくらいのサイクルで回るのですか?」
(瀬川社長)
「各店舗、月に1回か2回ぐらいのペースで回っています。」
(記者)
「少ないですね」
(瀬川社長)
「当社は店舗のスタッフを信頼して、任せているので月に1、2回で十分なんです。オーナーが毎日いるとやり辛いでしょう?」
(記者)
「そうかもしれませんね」
(瀬川社長)
「ミーティングとは別に、2、3ヶ月に1回のサイクルで飲み会をしています。」
■飲み会のルール
仕事の話はしない
高いお店は予約せず。スタッフの会費は3千円。不足分は瀬川社長が負担
参加者は、期日までに感想文を書いて提出すると、2千円キックバックされる
ちなみに、新店舗や新しいスタッフが入った直後など、無言が続きそうな時は、「3つ質問してね」と伝えるそうです。これを繰り返すと必ずといっていいほど、ご主人の話になり、その頃には場がすっかり和んでいるそうです。
飲み会の目的
子供のこと、ご主人との仲の事、家族の様子や悩みを聞くことで、会社として何か準備したり、対応すべき事が無いか早めに予兆を知るため。 ちなみに、ご主人の愚痴に関するネタが最も多いそうで、離婚の可能性があるかどうかを把握して置くことも重要だそうです。母子家庭になると生活費としてもっと稼ぐ必要があり、転職する可能性もあるからだそうです。
感想文を書くという行為が、自分の頭の整理につながる良質なアウトプットである
スタッフからフィードバックを得る
職場の飲み会と言えば、仕事や上司の愚痴のこぼし合いなど、いわゆるガス抜きである事が多いですが、同社の飲み会は目的とルールがあるちょっと変わった飲み会ですが、直ぐにでも導入できそうですね。
(記者)
「その他に取り組んでる事はありますか?」
(瀬川社長)
「サンクスカードと、毎月給料日に全従業員にお手紙を書いて渡しています」
■サンクスカード
サンクスカードとは、職場に用意されたカードに、職場の仲間のちょっとした行動に対し感謝の気持ちを記入して相手に渡すという活動です。パートさんは5枚で500円、正社員は10枚提出で500円キックバックするので、毎月締め日が近づくと、良いとこ探しが始まります。
人の粗は割りと気付きやすいですが、さり気ない良い行動や行為は気付かないケースが多いので、慣れるまではちょっと時間がかかる場合がありますが、慣れてくると日頃からサンクスカードを書けるようになるそうです。お互いに感謝の気持ちが生まれると、モチベーションアップや、コミュニケーションの円滑化など、職場の活性化につながる活動です。
■毎月、給料日に全社員にお手紙を渡す
毎月、給料日が近づくと、カフェを何件もはしごをして、全社員にお手紙を書いているそうです。時間が取られるとても大変な作業ですが一旦始めた以上、辞められないそうです。
「今月頑張ったこと」、「来月取り組んで欲しいこと」、「一生懸命働いてくれてありがとう」…。
全社員一人一人にメッセージを書いて渡しているそうです。先日、「社長、先月より文章が短いじゃないですか!」と言われたことがあるそうです。毎月、このお手紙を楽しみにしている社員がいるということですね。
毎月、お手紙を書くことで、全社員のフルネームを漢字で覚えるだけではなく、本人や家族の誕生日や記念日までも把握することもできるようになったそうです。
会社に務める、所属欲求が満たされると、次に承認欲求が高まると言われています。このサンクスカードと社長からのお手紙が、社員の承認欲求を満たす大切な役割をしているようです。
(記者) 「採用に関して工夫や苦労されて言うことはありますか?」
(瀬川社長)
「基本的に美容師の経験者の方のみ採用しています。採用する際に、それぞれの要望に応じた働き方を提供するようにしています。
一般的に美容室は勤務時間が長いため子育てとの両立が難しい職種だと言われています。美容院免許を持っていて、本当は美容師として働きたいのに、仕方なくスーパーのレジ打ちをしている人も多いのが現状です。当社ではそういった女性にどうやったら活躍の場を提供できるかを考えています。
ある優秀な美容師さんの場合、前職の給与が半減するような条件を提示することになってしまったんですが、「母親らしいことができなかったんです・・。一緒に働きたいのでよろしくお願いします。」といって面接の時に涙を流した方もいます。
(記者)
「最後に、その他の取り組みについて教えてください。」
(瀬川社長)
「無料送迎サービス、在宅カットサービス(訪問理美容)、カットができない美容師さんの育成に取り組んでいます。」
■無料送迎サービス
ご高齢の方など、ご自分でお車の運転が出来ない方向けに、無料送迎サービスを提供しています。10年以上前から通い続けてくれているお客様が、家族に気兼ねすること無く来店できるということからとても好評だそうです。移動中にお客様と様々な会話もできる上に、次の予約も確実に取れます。そのための運転手さんを雇用しているそうです。
■在宅カットサービス(訪問理美容)
お身体が不自由で来店できない方向けに、在宅カットサービス(訪問理美容)も提供しているそうです。こちらは、年配の美容師さんで毎日は働きたくは無いという方が副業としてされているケースが多く、訪問専用の美容師さんとして、成果報酬型での契約をしているそうです。会社にとっては固定費がかからないというメリットがあります。
■カットができない美容師さんの育成
美容師免許を取ったものの、美容師修行中に妊娠、退職してしまい、シャンプーやカラーリングのみしか出来ない美容師さんからの採用に関する問い合わせが増えているようです。
彼女達は、子育てのために勤務時間上の制限がある上に、スキルや経験が不足していることから、採用してくれる美容室は少ないようです。同じ育てるなら専門学校を卒業したばかりの人の方が、勤務時間に制限が無く、指導しやすいというのが理由だそうです。
そういった人材にも活躍の場を提供するために、厚労省のキャリアアップ助成金を活用するなどし、シャンプーやカラーリングのみしか出来ない美容師さんがカットもできるような育成にも力を入れ始めているそうです。
勤務時間が長く、ブラック企業が多いと言われる美容室業界において、同社が事業を着実に成長を続けている秘訣はは何なのでしょう?
感謝する
社長として大事なのは、従業員としっかりと向き合うこと
会社は社員の幸せのために存在する
この3つに尽きるのではないでしょうか。
これからは顧客満足よりも従業員満足。働き方改革がテーマにすると必ず出てくるキーワードですね。
同社はその先駆社の一つだと言えますが、「従業員を出社するのが楽しい!」と思える職場が、最終的には顧客満足へとつながる。二元論で議論すべきでは無いのでしょう。
社長が社員一人一人と向かい合う行動が、社員がお客さん一人一人と向き合う行動にとつながり、お客さんの悩みを知ることができる。その悩みを解消するために社員一人一人が考え、その提案を受けた社長が承認し推進する。
そこには従来の組織に必要とされていた、業務を遂行するために権限を与えられ指示するためのリーダーやリーダシップは不要。さらにはピラミッド型の組織も不要なのでしょう。同社では、瀬川社長を中心とした風通しの良いマトリックス型の組織になっているようなイメージを受けました。
同店の既存顧客のリピート率は100%に近いそうです。もちろん、来店頻度を増やすために、1ヶ月以内に再来店すると早割になるクーポンを発行したりといった施策にも取り組んでいるそうです。でも、それが理由ではないのが明確で、全てが社是に込めらているようです。
社是 「いい会社にしよう」
会社に関わるすべての人が「いい会社だね」といってくれる会社にする。
会社に関わるすべての人とは【社員】【社員の家族】【業者さん】そして【お客様】です。
【企業情報】
代表取締役 瀬川 憲章 生年月日 昭和36年5月9日 出身地 金沢市桜町 父の経営する理容店の二代目。 高校卒業後、東京でサロンに就職。29歳で帰郷し家業に入る。その後32歳で独立。 金沢市を中心に石川県と富山県内に美容室等を23店舗展開。 従業員数 約94名 金沢市中央倫理法人会会長
【店舗】
ヘアデザインサロン246
エッグビューティーサロン
ビューティーフェイスグランデ
めいてつエムザ店
美容室きらら(金沢市内、内灘町、野々市町、輪島市内に8店舗 主婦の美容室)
アビーズアイラッシュ アルプラザ金沢
エクステンション サルサ
ヘアメイク リタ
髪剪處(金沢市内に2店舗、冨山に3店舗 温浴施設内のカットサロン)
エステサロンアビーズ
ビーサポ 訪問理美容
アビーズアイラッシュアルプラザ津幡
2017/09/11現在