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自己実現の時代、もうそこまで来てるんだってさ。「もうピラミッド状の絵だけを書いて、マズロー博士をわかったつもりになるのからは、いいかげんに卒業しよう」

よく知っているようで、実はよく分かっていない、

自己実現・マズロー博士のお話です。

マズロー博士は、ドラッガー博士と同時代の人物ですが、残念ながら62歳と割と短命だったため、ドラッガー博士に比べて、あまり多くの著作はありません。

心理学者であったマズロー博士が唯一、経営に関して書いた手記を集めた『完全なる経営』という著作があります。

ジム・コリンズさん(ビジョナリーカンパニーの著者)が、

「ドラッガー博士の主張は、ほとんどすべてが正しい」

と、言っています(私もそれに賛同しています)。

そのドラッガー博士に、待ったをかけているのが、

このマズロー博士のご本です。

ドラッガー博士を「批判」しているというより、

「補強」しているような印象も感じますが...。

ドラッガー博士も、

「この本は、自分とマクレガーを現実に引き戻すために書かれたものだ」として、

マズロー博士の最も重要な不滅の作品にあげています。

このマズロー博士は、ほとんど誰もが知っている例のピラミッド「欲求五段階説」の、あのマズローさんです。

このご本の中で、マズロー博士は様々なことを書いていますが、ドラッガー博士やマクレガー博士のY理論に対して、「それは、幸せな社会の中で、成り立つ、という意味においては、正しい」と書いています。

その当時の(今もそうかもしれませんが)幸せなアメリカでのみ成り立つ理論である。と、ドラッガー博士やマクレガー博士に異を唱えているのです。

マズロー博士の最大の論点は、「幸せな社会」を創ることなんです。

マズロー博士にとっての「幸せな社会(=よい社会)」とは、「よい人間」が沢山いる社会です。そして、その「よい人間」を作るための最も大きな役割をはたすことができるのが、会社(あるいは非営利団体)であると指摘しています。

「よい人間」とは、「自己実現(自分自身になること、すなわちBing欲求を満たすこと)」に達したひとたちです。その「自己実現」は会社(仕事を通して)でこそ、起こりやすいと書かれています。

そして、会社は、社員が自己実現むかって、成長していくことを促すような風土づくりをその経営管理の目的とすべきだと書いています。

極論すると、社会における会社の使命は、「よい人」をつくることです。

これは、松下幸之助さんが、松下電器は電気製品を製造販売するという手段を通して、「人をつくる」会社ですと、おっしゃっていたことと、類似します。

このマズロー博士のご本には、社員をコストとしてではなく、会社のパートナーとして一人ひとりがかけがえのない存在としてのあり方(Being)を目指して行くための組織管理へのヒントがたくさん書かれています。社員を信じた、性善説経営です。

性善説経営といえば、伊那食品工業ですが、ここでマズロー博士が書いていることと、塚越会長が知行合一でやられている経営とが、ものすごく重なります。もしかして、「いい会社をつくりましょう」という理念は、マズロー博士からきているのかな、と思って、伊那食品工業の幹部の方にお聴きしたんですが、どうやらそれは違うようでした…笑。

少し余談ですが、マズロー博士の名前が挙がったら必ず登場する、例の欲求5段階のピラミッドの絵ですが、実はマズロー博士自身は、ピラミッドの絵など使ったことが無いようです。

ハーバードのある先生がこう言っています。

「もうピラミッド状の絵だけを書いて、マズロー博士をわかったつもりになるのからは、いいかげんに卒業しよう」...笑。

さて、これが今から47年前(1970年)に亡くったマズロー博士が、夢見た、多くの人たちが自己実現に邁進する社会です。

さて、この続きがあります。

「私がマーケティングの父ならば、ドラッガーはマーケティングの祖父である」

というセリフで有名な、フリップ・コトラー博士が、近年よく口にされているのが、

『マーケティング4.0』です。その概念が、『自己実現』に深くかかわっていると、 様々な場所で発言されており、みなさんとても、興味津津でした。

そして、今年の3月に、コトラー博士が、日本人のために書き、日本だけで発売された『マーケティングの未来と日本』の中で、『マーケティング4.0』の説明に、ひとつの章を割いています。

そのご本の中で、コトラー博士は、現代はすでに、自己実現に向かって邁進している人が沢山いる社会となってきており、マーケッターはそのことに意識を向けなければいけないとしています。

自己実現の社会を強力に後押ししているのは、インターネットを始めとした、デジタル革命で、社会のありかたや、生活や仕事や教育、価値感、行動様式など、あらゆるものが大きく変貌し、今まで出来なかった新しいことがどんどんできるようになってきたことです。そのような社会背景の中で、内発的動機づけにより一次元高い欲求を満たそうとする人たちがどんどん増えてきたということです。

コトラー博士は、マズロー博士が夢見た自己実現の社会が、すでにもうそこまで来ており、その社会に対応した、マーケティングが必要だと説いているのです。きっとマズロー博士も草葉の陰でお喜びになっているのではないかと思います。

話は変わりますが、「マーケティング4.0の時代」、当然、企業と従業員や顧客(消費者)との関係も大きく変わっていきます。

この「マーケティング4.0の時代」に、顧客に選ばれる企業としてのアンケートで名前が挙がった28社(アップルやアマゾン、コカ・コーラ)の8つの共通項が挙げられており、とても興味深い内容なので、転記しておきます。

①すべてのステークホルダーの利益を一列に平等にしている。

②管理職の給料が、比較的控えめである。

③経営トップに接するのに、オープンドアポリシー(社長室のドアを常に開けっ放しにしておき、従業員がいつでも話かけられる制度)をとっている。

④従業員の給与が同じカテゴリーでは高く、従業員教育も長く、離職率も低い。

⑤顧客に対し、情熱的な人を使う。

⑥サプライヤーを真のパートナーとして位置づけ、生産性向上、品質改善、コスト削減に協力する。

⑦企業文化を最も大きな資産と考え、競走上の優位性の主要な源になると考えている。

⑧マーケティングコストは同業者よりもはるかに低いのに、顧客満足度と顧客維持度ははるかに高い。

自己実現、マーケティング4.0、考えようによっては、楽しく、幸せな人たちが増えていくような気がします。これからの時代、売る人も、買う人も、働く人も、『自己実現』がキーワードになってくるかもしれませんね。

人間の使命とは、可能な限り「自分自身」になることである。

・・・アブラハム・H・マズロー

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