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【開催レポート】パエリア作りで学ぶ多様性の原則とは?同じ材料、同じレシピなのに味が違う!?

先日、予告していました、コラボワーク代表の中村龍太さんが考案したパエリアワークショップを開催いたしました。

※中村龍太さんは前列の一番左

ワークショップでは、たくさんの気付きと学びがありましたので、レポートいたします。

【予備知識】

 

本場のパエリアはシーフードではなく、肉!?

まず、パエリアについて簡単に学んでおきましょう。

パエリアとは、スペイン東部バレンシア地方発祥の、ジャバニカ米と野菜、魚介類、肉などを炊き込んだ料理の事。

伝統的なバレンシア風パエリアは、農作業に精を出す人々が地べたで火をおこし、お米と身近な食材を入れて炊いて食べたことが始まりで、日本のパエリアのように、シーフードではなく、うさぎの肉や鶏肉と、いんげん豆などなど山の幸で作るのが基本だそうです。

また、バレンシア風パエリアはシーフードとは異なり、出汁を使う必要が無いのが特徴です。

どうやら、スペインにおけるパエリアというのは、日本の寄せ鍋にあたるような存在のようですね。地域によって使う食材の種類が異なるようですが、いつもと違う食材を入れたりすると、パエリア奉行(騎士?)に怒られたりするのは日本と同じかもしれません(笑)。

また、日本のパエリアはインスタ映えする料理の一つですが、本場のパエリアは、インスタ映えだけではなく、おこげ、味、色、食感で勝負だそうです。特に日本で見るシーフードパエリアのようにムール貝やエビなど、具をてんこ盛りにはしないのが基本だとか。

50cmのパエリア鍋で

パエリア鍋は、鉄製で両側に持ち手がある、浅くて薄く大きいフライパンのようなものです。

今回、ワークショップで使った鍋は、友人が持っていた50cmのものです。

パエリア鍋を持っている人は少ないので、ワークショップをする際には購入する必要があります。ネットで6千円ぐらいから買えます。

パエリアは薪で炊く

パエリアワークショップではガスや炭は使いません。薪で火をおこして炊きます。

「えぇぇ〜?!薪割りするの?」って思いませんか?

薪といえば、薪ストーブ。その燃料となる太い木を斧で割っているイメージがありませんか?えっ、それは私だけ?(笑)

もちろん、写真のような薪を斧で割っても良いのです。ただ、パエリアで使う薪はこんなに太い薪を使うわけではありません。なぜなら、太いと火の調整が難しいからです。

ところで、薪はどこに売っているかご存知ですか?もちろん、ネットやホームセンターで売っています。ただし、意外と安くなかったりします。費用を抑えたいのであれば、建築中の住宅に行って端材を譲ってもらう、あるいは、端材を格安で販売しているホームセンターなどもありますので、一度、問い合わせてみると良いでしょう。

ただし、山で拾ってきたものは湿っていて燃えないかもしれませんので要注意です。ちなみに、薪はナタで意外と簡単に割れます。

ブロックやレンガを積んだ上に鍋を置き、隙間から薪を入れて燃やすのですが、地面が土ならば良いのですが、コンクリートの場合だと黒く焦げたり、アスファルトの場合だと溶けて変な匂いが発生したりする可能性があるので、下にブロックや鉄板を敷いたほうが良いでしょう。

BBQ場では薪を使えない!場所探しが大変

今回の準備で苦労したのは場所選びです。BBQ場を使えば、洗い場や炉が完備されているので便利なのですが、私が調べた限りだと、薪を使わせくれるとことはほとんどありません。どうやら薪を使うと煙が出るのが理由だそうです。BBQをしている人の横でもくもくと火や煙を出されたら確かに迷惑ですよね。

また、50cmのパエリア鍋は炉に載らないからといって断れたことも。結論から言うと、参加者のどなたかのお家の庭でするのが一番です。

以上が、事前準備で最初につまづくポイントです。食材については何らかの方法で調達はできるのでここでは割愛します。

【ワークショップの全体の流れ】

 

パエリアワークショップは、2週間以上前からスタート

パエリアワークショップの目的は、「パエリア作りを通じてチームワークを学ぶ」です。BBQのように交流を図るだけでためが目的であれば、数人で食材の買い出しなどの準備をすれば、ほとんどの人は当日参加するだけ。肉を焼くことも無く食べるだけの人が何人いてもおかしくはありません。一方で、パエリアワークショップは、2週間以上前からスタートします。

パエリアワークショップは、次のようにイメージするとわかりやすいです。

ある日、会社の人事部から一通のメールが届いた。

その内容は、2週間後に無人島に5人で行ってパエリアを作るという研修の案内だった。メンバーは自分で声を掛けて招集するようだ。レシピと必要な道具のリストが添付されていて、自分たちで調達して持ち込んで良いとのこと。ただし、予算が決められている。さらに、同じメールが同期のもう1人にも送られているようで、どうやら、競い合うらしい。

このワークショップは少なくとも、開催日より2週間以上前からスタートします。メンバーを集めるところから始め、道具、材料の調達、調理方法まで、全てチームで考え、決めていきます。その過程でチームワークを学ぼうというものです。

寄せ鍋やBBQであれば、何を準備をすれば良いかが容易に想像することができますし、食材はスーパーマーケットに行けばほぼ揃います。

ところが、パエリアの場合はどうでしょう?パエリア鍋、薪?どこに売ってるのかを調べるところから始まります。

うさぎの肉、モロッコいんげん、サフラン、パエリア用のお米・・・。スーパーマーケットでは売っていないものばかりです。しかも、予算が決まっていますので、ネットで注文してしまうと送料が高くついてあっという間に予算オーバー。

会社で管理職をしている人がレシピを調べる役割を引き受けたとします。まずは、ネットでパエリアの作り方を検索することでしょう。すると、レシピがたくさん見つかりますが、でも、どれを参考にすれば良いか迷ってしまうことでしょう。普段料理をしないお父さんがどれだけレシピサイトを見ても、どれが最良の選択なのかはわかる由はありませんね。

結果として、チームで料理の得意な人に相談するか、任せるべきだと言うこと気付くことになるでしょう。

普通の会社では、上司が部下に相談したりすることはあまり無いかと思いますが、このワークショップでは年齢も役職も関係ありません。同じ目線に立ち、お互いを信頼しながら進めていくことが必要なのです。

また、最初にメールを受け取った2人が必ずしもリーダーになる必要はありません。むしろ、リーダーなんて居なくても各々が判断し、自発的に行動をしていくのが理想的なのです。

そして、どんな失敗があっても、原因を追求するよりも臨機応変に修正をしていく力が求められるのです。

【パエリア作りにチャレンジ】

 

見た目より味 vs 火の鳥(コンセプト)

当日は、2チームに別れてバレンシア風パエリア作りにチャレンジし、競い合います。今回は材料や道具についてはチームごとではなく、まとめて調達したのでスタート時点では条件は横並び。作り方で勝負することになります。

チームメンバー

  • Aチーム(男性2名、女性1名、男子小学生1名)

  • Bチーム(男性3名、女性1名)

まずは作戦会議。まずは、チームのコンセプトを決めます。

コンセプト

  • Aチーム(見た目より味)

  • Bチーム(火の鳥)

そして役割を洗い出し、役割分担をした上で、パエリア作り開始!

Aチームの特徴は、材料や調味料などは正確に測らず目分量。頻繁に味見をしながら味を整えていく。見た目はこだわらず、味に注力。

一方のBチームは、火の玉ボーイ(笑)が火力をコントロールしながら進めていく。味もさることながら、インスタ映えするように見た目もこだわっているのが特徴。

パエリア作りのプロセスについて書き出すと長くなるので、出来上がるまでの様子はAチームのダイジェスト動画をご覧ください。

パエリアは1時間強で完成。次の、途中から参加した人や講師の中村龍太さんを含め、14人で試食し採点。採点項目は、味以外にも見た目や食感、そしてパエリアの特徴であるおこげなど。その合計得点で勝者が決まります。

採点シートの記入が終わったらお食事タイム。アルコールも入ってみんなニコニコ。話も弾む。

【得点発表】

 

見た目より味にこだわったAチームの勝利!

お腹が一杯になったところで、採点結果の発表!

採点の結果・・・。ジャジャジャジャーン。僅差でAチームの勝利!

やはり、味が決めて。見た目はBチーム。でも、Bチームはおこげが焦げてしまったのが大きな敗因。一口目の食感はBチームの方が良いのですが、やはり味はAチームの方が美味しかった。同じ材料、道具、レシピなのに、こんなに味に違いが出るとは些か驚き。また、この採点結果には全員納得。

【振り返りタイム】

 

チームワーク分析のための4つの問いによる振り返り

パエリアワークショップで最も重要な時間が「振り返りタイム」です。「反省会」という言葉が一般的ですが、ここでは「振り返り」という言葉を使います。

チームワーク分析のための4つの問いを使って振り返りを行います。「間違った」「失敗した」「あーすればよかった」といったネガティブな要素を引き出すのではなく、「ここが良かった」「ここは褒めたい」といった称賛のための問いかけを行います。

  • 1つ目の問いは、「自分の強み・得意なことを活かせた意識・行動」です。まずは、自分自身に対して問い掛けます。

  • 2つ目の問いは、チームメイトに対する問い掛けです。チームメイトの強み・得意なことを活かせた意識・行動を本人に伝えます。

  • 3つ目の問いは、「パエリアをもっと良くするには?」。もう一度チャレンジするならどこを改善すれば良いか。

  • 最後、4つ目の問いは「最高のチームワークを作るには?」です。結果として、部下を監視、管理、指導するなどといった従来の組織論や制度ではなく、お互いの信頼や、良いところを称賛し伸ばす、裁量を与えるなど、自発的な行動を促すような言葉が並びました。

パエリアワークショップで疑似体験できるティール組織

パエリアワークショップでは、役割をあらかじめ固定したり、誰かが指示したり、意思決定をしたりはしません。チームメイトはチームが決めたコンセプトを実現するために、助言、共鳴しながら関わっていきます。また、コンセンサスを取るというよりも、気付いた人がチームメイトからの助言をベースに、実験、振り返りを行い、シェアしながら、助言、実験を繰り返していきます。これをティール組織では「セルフマネジメント」と表現しています。

同じ素材、レシピを使ったのに、見た目も味も全く異なる2種類のパエリアが出来上がりました。まさに、「セルフマネジメント」の結果が「アジのあるパエリア」だと言えます。

通常のBBQでは交流が目的だと思います。一方、パエリアワークショップでは、振り返ることの大切さを学ぶことで、誰に指示されるわけではなく、チームの目的をメンバー全員で進化させていくことが可能であるということを知る事ができます。

そのためには、メンバーの多様性を尊重し、お互いの活動を支援し合うサポーターのような存在になれるよう、心理的に安心して活動できる環境を整えることが必要です。 また、今回は注目すべきは、小学校5年生の男の子(カズマックス)の存在です。

大人は初対面の相手に対しては、空気を読みながら発言や行動をしがちです。ところが、彼は全く怖気づくこと無く、自らが率先して発言したり、行動したりと、ムードメーカーのような役割を担っていたそうです。彼のこういった行動に、『カズマックスに最高に美味いパエリアを食べさせてやる!』と本気のスイッチを入れられたと発言するチームメイトも。

カズマックス本人に、後日、彼の役割を尋ねると、「ムードメーカー」という言葉が返ってきました。

また、「具体的にどんなことをしたの?」との質問には、「パエリア上手に作るよりもみんなが楽しめるように積極的に大人の人に話しかけるようにした」との回答。

子供だけど自分の役割を感じ取り、大人と大人を繋ぐ役割を果たしていたのでしょうね。

まるで、ベストセラーの「君たちはどう生きるか」に登場するコペルくんと叔父さんとの関係のようです。

このように、パエリアワークショプでは擬似的にティール組織を擬似的に体験することができます。

Aチーム(写真一番左がカズマックス)

Bチーム

パエリアワークショップ作りのおける7つの多様性の原則

最後に、パエリアワークショップに参加したことで得られた気付きを、「パエリアワークショップ作りのおける7つの多様性の原則」というタイトルでまとめてみました。

  1. 一人として同じ人は地球上には存在しない

  2. 人を性別、年齢、血液型などで分類する自体が無意味

  3. 他人に従うのではなく、自分たちで判断、責任を持つ勇気を持ち、行動すること

  4. 多様性(違い)を受け入れ、祝福すべき

  5. 他人の意見や選択を尊重すべき

  6. 自分視点のみで判断したり、決めつけたりしない

  7. 答えは一つではない

クッキングワークショップでチームビルディング。美味しいものを食べているときは誰もが幸せな顔になる。その中でも、パエリアを使ったワークショップは最も適しているのかもしれません。

もし、会社や団体などの組織の交流を高めるために、BBQなどを計画している人がいたら、ぜひパエリアワークショップにチャレンジしてみませんか?

このレポートを元に自分たちでクッキングワークショップを企画してみるのも良いでしょう。あるいは当研究所にご連絡をいただければ私達が窓口となり、中村龍太さんと一緒にサポートいたします。

下記の動画はパエリアワークショップのダイジェストビデオです。

中村龍太さん、貴重な体験をさせていただきありがとうございました!

 

筆者プロフィール

山崎ジョー吉

複数の企業に所属、あるいは契約をして働くポートフォリオワーカーとして働きつつ、地方での未来の働き方を発明する「金沢発!働き方の未来研究所」を立ち上げ、所長に就任し、地方における働き方改革の推進と啓蒙活動を行っている。

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