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【セミナーレポート】働き方の未来:フリーランスと企業が協同する働き方とは

都内で5月14日、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が、ランサーズ株式会社株式会社Waris株式会社日本政策金融公庫による4社合同プレスセミナー「フリーランスの多様な実態~4社調査比較~」を開催しました。

「フリーランスとして働きたい」、「副業をしてみたい」、「フリーランスを活用したい」など、新たな働き方を模索している人にとても参考になる内容でしたので、わたくし、”人を繋ぐボーカリスト" の "いけだことよ" がレポートいたします。

■そもそもフリーランスとは?

フリーランス協会によると、フリーランスの定義では次の通り。

「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」

ちょっと、分かりづらいですが・・・「会社などの組織に所属せず、自分のスキルを活かしてプロジェクト単位で仕事をしている人」のようです。ドクターX〜外科医の、大門未知子をイメージすると良いかもしれませんね。大門未知子が「アルバイトのくせに〜」と言われていましがが、フリーランスとアルバイト、さらには個人事業主など、定義があいまいで混同して使われるケースが多いようです。

私の認識としては、アルバイトやパートとの違いは、フリーランスは働いた時間ではなく、成果に対する報酬をもらっている人だと捉えています。(クラウドソーシング等で時間チャージ型があるようなので全てではありませんが…。)

また、フリーランスは大きく2種類に分類されます。

  • 独立系フリーランス

  • 副業系フリーランス

前者の独立系フリーランスは、一般的には個人事業主を指します。後者の副業系フリーランスは、1社の社員として雇用されながら、個人事業主として別の仕事をしている人を指します。最近では、複業やパラレルキャリア、パラレルワーカー、ポートフォリオワーカーなどといった様々な表現をされていて、現在注目されています。

講義のフリーランスの類型

■フリーランスってどのくらいいるの?

2018年時点での広義の国内のフリーランス人口は1,119万人(人口に占める割合は17%)。また、フリーサンスの経済規模は20.1兆円だそうです。ピンときませんが米国(154兆円)と比較するとまだまだ小規模なので、国内ではまだまだ増えそうですね。

ちなみに、副業系フリーランスの人口は744万人。経済規模は8兆円。フリーランスの7割弱が副業系。副業系の職種としてはビジネス系やIT・クリエイティブ系が増えてきているとのこと。

■フリーランスと会社員、比較してみると・・

フルタイムのフリーランスの年収分布では300万円〜500万円がボリュームゾーンで会社員とあまり変わりません。しかし、フリーランス全体で見ると年収のばらつきが多お大きいようです。

フリーランスの魅力は「時間と場所にとらわれない自由で柔軟な生活」。フリーランスの44%の人がそう回答しています。一方で、「収入の不安定さ」をフリーランスを続ける上での障壁と考えているようです。仕事探しは人脈(知人の紹介)が最も多いようです。クラウドソーシングは12%。

また、Waris社の「変革型フリーランス実態調査」によると、変革型フリーランスと言われる人の満足度が高く、フリーランスは変革型フリーランスを目指し、企業も変革型フリーランスを積極的に活用すべきだとしています。

変革型フリーランスとは、

「高い専門性を持ち、取引先企業と対等な関係を通じて、企業の組織変革やイノベーション創出の触媒としての役割を担うフリーランス」のこと。

具体的には次のような人。

  • 高額な単価を獲得している(中央値3,000円)

  • 月160時間以内の労働時間で、リモートワークを活用して働いている

  • フリーランスになったことに満足して働いており、将来もフリーランス、もしくは経営者として働きたいと思っている

  • 会社員としての経験が10年以上ある

  • 多くが企画、マネジメント型の業務に従事している

フリーランスと会社員のしごとに対する意識比較

会社員が仕事をしていくうえで重視しているのは「忍耐力」。一方で、フリーランスが仕事をしていくうえで重視すべき項目は「セルフブランディング」、「成果に結びつく専門性・能力・経験」「人脈づくり」。やはり、自分のやりたいことや使命といった将来に対する明確なビジョンを持ち、確固たる人間力を持ち、質の高い人脈、ネットワークを持っている事ではないでしょうか。

 

ここからは、パネルディスカッションの中で印象的だったものを幾つかピックアップしてご紹介します。

■組織を超えたプロジェクト型の働き方が増えていく中で、企業の課題は?

【中西穂高教授】

現在、オープンイノベーションが注目されている。しかし、社員という「同質」の人たちだけでは上手く機能できない。業務を切り分けられない働き方をしているがために、外部の力である、フリーランスを受け入れる準備ができていない。

【石山恒貴教授】

フリーランスを活用するときの企業側の課題はテレワーク活用の課題と同じ。目の前にいない人に業務を依頼する場合、企業が各業務を明確にしていかないと上手くいかない。逆にそれができている企業は、外部のフリーランスが来ても業務をどんどん進めていけている。

フリーランスと対等な立場で接すること

部下に対するときと同様に、フリーランスに対する指示が曖昧だったり、無理難題を強要したりしているようではフリーランスをうまく活用することはできません。フリーランスをパートナーとして対等に扱うことが大切です。また、常に目の届く距離にいるわけではないので、コミュニケーションの手段についてはICTを活用するなど、フリーランスを受け入れる事で、企業自身が働き方を変えていくきっかけにもなるのではないでしょうか。(いけだことよ)

■フリーランス側の課題:企業と対等な立場で協同していくために

【小崎亜依子氏】

自ら課題を見出し、必要な業務を明確にしていけるスキル、ビジネスマナー、コミュニケーション能力。そして、人脈を獲得していること。そのために、会社員の経験は不可欠。

【河合優香理氏】

自発的にフリーランスになった人は特に満足度が高い。社員としての経験が10年以上あり、ビジネスマナー、専門スキルを持った人が、調査結果では収入、やりがい等の面で満足度が高い。会社員時代にしっかり準備をして、覚悟を決めたうえでフリーランスになることが、満足度を上げる結果につながる。

【中西穂高教授】

質の高い「緩いネットワーク」を持つことが必要不可欠である。そのネットワークは会社のように常時一緒にいるのではなく、「緩やかなネットワーク」をもっている人脈、実践共同体である。

会社員の経験

フリーランスになる人が組織に縛られるのが嫌でスピンした人が多いとすると、従来の企業の批判的、あるいは理解をしていない人が多いかと思います。しかし、相手先の企業のルールを知らずしてうまくコミュニケーションを取ることは難しいことから、会社員で居るとき以上にヒアリング能力が求められるのではないでしょうか。(いけだことよ)

■会社員として働いている人の課題 

【河合優香理氏】

会社員の41.8%が「副業」の挑戦に意欲的なのだが、興味はあっても、「漠然とした不安感」、「何から始めてよいかわからない」というのが現状。現代は会社に入社することがゴールになっているが、そこでどういった経験を積んで、その後どういった仕事をしていくのか、人生100年を見据えたうえでのキャリアプランを考える必要がある。そのために早いうちから自己投資をしてセルフブランディングをしていくこと、外に出ていくことが非常に大切ではないか。

【石山恒貴教授】

ネットワーク作りは会社員時代からもできる。プライベートで勉強会や、NPO団体の活動、ビジネススクール等で、人脈形成や、パラレルキャリア慣れをすることが、将来のフリーランスの協同的な働き方をしていく場合にとても有効である。

将来フリーランスを目指す、目指さるに関わらず、自分の市場価値を知る、自分の価値を上げる、セルフブランディングのために副業(複業)に挑戦するという視点は重要ですね。(いけだことよ)

■企業が求める人材を育てるために、越境的学習の試み

【河合優香理氏】

今回の調査で、会社員の方たちが「やり甲斐が無いままに働いている」ことが明らかになった。彼らがどうやってやり甲斐を見出そうとしているのかというと、今は、みんな「学習」をすることの一択となっている。なぜなら副業を受け入れる先(組織)が無いから。それでは何を、どうやったら良いのかわからない。

【石山恒貴教授】

個人は変わって行こうとしているのに、組織(企業)はまだそれを受け入れられない。組織はいかに変わった個人を受け入れられるか、フリーランスの大きなうねりに対して、企業はどうやってそれを受け入れていくかが課題となっている。

【中西穂高教授】

企業が求めるスキルと、個人が学ぼうとするスキルとのズレがある。企業は上手く事業を切り出せないから、そのままマルっと課題を投げて、やっておいて!というスタンス。だからこそ企業は解決型の社員をどうやって育てていくかが課題となっている。

【曽根秀晶氏】

一部の企業では、社員を外部に送り出して、越境学習を受けさせている。また社内ダブルジョブシステムを採用して、越境学習的なことを社内で試みている企業もある。

同質であること、会社への忠誠を要求し続けてきた企業は、社員の意識の変革に苦慮しています。大企業になればなるほどなおさら。企業が望む人材を育てるためには、働き方改革に対するトップの強いコミットメントと、社員教育にどれだけのコストを投入できるかにかかっているのではないでしょうか。(いけだことよ)

■フリーランスと企業のこれからの働き方は 

【曽根秀晶氏】

プロジェクトベースの働き方が増えていく中で、企業もフリーランスもプロジェクトチームのパフォーマンスをいかに最大化することが課題になっていく。その中で会社員もフリーランスも自分のブランディングをしつつ、先を見据えながら自らのキャリア形成をしていくことが必要だ。

【河合優香理氏】

フリーランスは『ピン芸人』のようなイメージ。今後フリーランスがそれぞれ横のつながりを作ることで、企業と対等に仕事を進めていけるのではないか。

【中西穂高教授】

長期雇用がスタンダードであったのは過去の話。今や企業は社員に最後まで責任を負いきれない。であれば、社員が将来外に出て、フリーランスとして企業と共同していくことによって、最終的にフリーランスを目指す人と企業がウィンウィンの関係を築いていくことができれば、これからのフリーランスは重要な役割を担っていくことだろう。そういった人材を育てていくこと、それもまた企業の役割の一つだ。

【石山恒貴教授】

副業も含め、未来の働き方において、フリーランスは増えていくと考えられる。といってもフリーランス全盛の時代になるわけではなく、雇用とフリーランスが共同的な新しい働き方が中心になっていくだとう。とすれば、今のフリーランスの働き方が、ひな形になっていくのではないか。

定年までの雇用が保証されない時代、最初から起業や転職を見据えて入社してくる新入社員も増えることでしょう。逆に企業は会社の利益に貢献できる社員を引き留めるために今以上の努力が必要です。採用もさることながら離職率をいかに下げるかがポイントです。(いけだことよ)

全体を通じて(編集後記)

4社合同プレスセミナーを参加して感じたことは、今の日本企業の閉塞感を打破するためには、会社の組織やルールが変わるのを待つのでは無く、自らが行動することです。

政府が掲げる「働き方改革」によって、会社員の間で「副業(複業)」に関心が高まっています。その理由は、会社組織の中で、もやもやしながら我慢をして働いている自分に閉塞感を感じているからです。その出口を、副業というフィールドに見出そうとしているのです。

副業(複業)には、フリーランスの多くが注力している「セルフブランディングの向上」、「ネットワークづくり」が必要不可欠です。そのためには、会社の看板ではなく、自分自身のブランドを意識し、取引先とは異なるネットワークを作り出していくことが必要です。

会社の歯車でいれば良い時代は過去のもの。各々が自動車となり自律走行できるようになれば、その企業は世界でも戦える企業に成長していくのではないでしょうか。

副業(複業)は期待以上の価値をもたらしてくれるはずです。やらない理由はありません。(いけだことよ)

パネルディスカッション登壇者

  • 石山恒貴 氏(法政大学大学院政策創造研究科 教授)

  • 中西穂高 氏(日本テレワーク学会副会長 / 帝京大学教授)

  • 河合優香理 氏(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)

  • 曽根秀晶 氏(ランサーズ株式会社 取締役)

  • 小崎亜依子 氏(株式会社Waris / Waris Innovation Hub プロデューサー)

  • 小池俊太郎 氏(日本政策金融公庫 国民生活事業部 東京創業支援センター 所長)

各社レポート

 

筆者プロフィール

いけだ ことよ

【人を繋ぐボーカリスト】

様々な活動を通じて「人と人をつなぐこと」が人生のミッションと信じて、楽しみながら遂行している。金融機関、メーカーの貿易部、その後外資系企業にて、秘書、営業サポートとして27年間勤務。 現在:公益社団法人日本心理学会 認定心理士の会運営委員会 委員

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