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アミングという「こころを磨く学校」があるのを知ってますか?

アミング(Aming)といえば、金沢市にある雑貨店のことです。金沢市に住んでいる女性でこの店を知らない人はいないでしょう。

金沢市の郊外の15坪のちっちゃなファンシーショップとして産声をあげたアミングは今年でなんと33年。今では、北陸地方(石川県、富山県、福井県、新潟県)以外に、長野県、滋賀県、愛知県、群馬県、栃木県など、全国に30店舗を構えるまでに成長しています。

雑貨とは日用雑貨品の事で、食料品や衣料品を含まないものを指します。「雑貨」という言葉は、日本が西洋化する過程で、当時の民衆たちが身の回りに増えていく「分類不能な舶来品」を総してつけた名称が「雑貨」だったという説もるそうです。

また、雑貨というと、ちょっとおしゃれな小物をイメージする事が多く、様々な雑貨店が増えています。

雑貨店といえば思い浮かぶのは、LOFT、東急ハンズ、PLAZA(旧ソニープラザ)、フランフランの4社ですね。いわゆる生活雑貨に特化した純粋な雑貨専門店で、店舗面積は200~400坪。

また、業界動向サーチによると、2015年の雑貨業界の市場規模は、6585億円だそうです。(対象12社の合計、良品計画 、フランフラン、東急ハンズ、ヴィレッジヴァンガード、レック、SHO-BI、パスポート、トランザクション、ミサワ、Hamee、イデアインターナショナル、雑貨屋ブルドッグ)

ただ、上記以外にも雑貨を取り扱っているお店があります。例えば、100円ショップのダイソーや、セリア、そして、最近人気の3COINS。ドンキホーテ。ニトリ、イケアなど。

経済産業省「商業統計」によると、2014年の洋品雑貨・小間物小売業の事業所数は1万4,997店となっていますので、全国のスーパーマーケットの数が20,484店舗(2017年11月末時点)であることからも、既に店舗の数では飽和状態に近いのかもしれません。

玉石混交な雑貨業界においてアミングが、今もなお成長を続けている秘訣とは何なのか?まずは、そのルーツから辿ってみましょう。

■アミング誕生の秘話

どうやら、アミングは雑貨店に勤めていた人が、「雑貨店をやりたーい!」と言って始めたわけではなさそうです。

さかのぼること1984年。西江あきよさん(現、アミング社長)は1歳の子供を育てているママさんでした。

ある日、義父(西江社長のご主人のお父様)が経営する会社「大同魚網」が、社屋を移転することになり、その所有地を人に貸す事にしたそうなんです。ところが、15坪だけ余ってしまったのです。狭い土地では借り手が見つからないだろうということで、義父は西江夫妻に対し「お前たちこの土地で何か店でもやってみないか?」と声をかけてきたそうです。

それを聞いた、西江あきよさんは「はい!私やります!」と即答してしまったのです。「何を始めるの?」と聞かれたのですが、もちろん、ノーアイデア。「今から考えます」と答えるにとどまったそうです。

当時、サラリーマンでSEだったご主人と、話し合った結果、保育士の経験がある西江あきよさんからの提案で、当時、原宿の人気スポット「キディランド」のように、子どもたちが学校の帰りに立ち寄れるファンシーショップを始めることに決めたそうです。

ご主人は、勤めていた会社を辞めて、一緒にファンシーショップの立ち上げに専念。まずは、商品を仕入れるために金沢市内の問屋さんに相談にいったのですが、「ド素人は、やめておいた方がいいよ!」とバッサリと断られてしまったのです。

それでも「他の問屋さんを紹介してもらえませんか」と引き下がったところ、別の問屋さんを紹介してもらえることになり、早速、取引のお願いをしにいった結果、何とか取引をしてもらえることになったそうです。どうやら、義父の会社「大同魚網」の信用があったからでしょう。

アミングは、実は雑貨ド素人の夫婦が始めたファンシーショップだったのです。

■アミングという社名の由来

アミング(Aming)という社名の由来についてですが、英語でもフランス語でもなく造語だそうです。実は「大同魚網」の網=アミから取った「網ing」なんです。ちょっとビックリ。でも、覚えやすくてセンスの良さを感じる素敵な名前ですよね。

15坪の小さなお店からスタートしたアミング。西江夫妻が、最初の目標に設定したのが150坪の店。当時の大規模小売店舗法の第二種大規模小売店の店舗面積が500㎡(≒150坪)以上だったことから、開店日、店舗面積、閉店時刻、休業日数などの規制に縛られない最大規模のお店として150坪の店を目指すことに。

その目標は9年後の1993年12月に達成されたのです。金沢市元町に150坪のアミング元町店をオープン。雪が降る日にも関わらず店を訪れる人が後を絶たず、ついに入場制限をするほど。店内は人でごった返し、暖房ではなくクーラーをつけるほどの賑わい。梅田のキディランドから視察に来るなど、業界でも注目の繁盛店となったそうです。元町店の初年度の売上はなんと5億円。現在のアミングの売上が30店舗で約86億円であることからも、当時の元町店がいかに繁盛していたかがわかりますね。

■アミングに勤めていると、結婚の条件で不利になる?

順風満帆かのように思えたアミングだったが、西江あきよさんに忘れられない出来事が起こったのです。

とても優秀なスタッフがある日、辞めたいと言ってきたそうです。いつも、楽しそうに働いていたので、「なぜ?」と理由を聞いたら、「アミングで働いていたら結婚の条件で不利になるから、もうちょっとちゃんとしたところで働きなさい!」と両親に言われたそうです。

「私の会社って社会に認めてられないんだ!こんないい子がアミングで働いていることで低い評価されるなんて!」

アミングは店舗を増やせば増やすほど、ある悩みを抱えることになったのです。それは「人」です。新しい店舗のスタッフを採用したくても応募が集まらない。スタッフが長続きせず辞めていってしまう。平気で悪口、不平不満を口にするスタッフ。そして、「アミングに勤めていると、結婚の条件で不利になる」といって辞めていったスタッフ。

どうしたら人に恵まれるんだろうか?

良い人を採用できないのであれば、人を育てれば良い。

でも、どうやって育てたら良いの??

どうしたらいいの?

こころに穴が空くほど悩み続けた西江あきよさんは、ある日、あることに気付いたのです。

「立派な会社には企業理念というものがある」

その日から、「アミングの理念」作りが始まったのです。

■仕事を通じてこころを磨き「人から喜ばれる自分」になることを目指す

アミングの理念をご紹介します。決して特別な内容ではなく、ごく当たり前の事なのですが、これがアミングのこころ磨きの原点なのです。

 

私たちはこの8つの考え方を基本とし、仕事を通じてこころを磨き「人から喜ばれる自分」になることを目指します。

  1. あいさつ

  2. 整理整頓

  3. 笑顔

  4. 元気

  5. 素直

  6. 感謝

  7. 持続

  8. 勉強

 

また、アミングでは「アミングの理念本」を全社員に配布しています。

「アミング理念本」のプロローグの西江社長の最初の言葉がとても印象的です。

「あなたは、何のために働きますか?」

「あなたは、何のために生きていますか?」

これは、わたしたち働き方の未来研究所が掲げるテーマと同じです。時短や生産性向上などの効率化も重要ですが、働くことで、出会い、学び、成長、そして感謝する利他のこころを磨くことの方がずっと大切なのです。

働き方改革の本質はここにあるといっても過言ではありません。

アミングの理念に共感したスタッフが集まり、スタッフの言動や行動に共感したお客さんが集まって来ているのでしょう。

■アミングのこころの勉強会

アミングでは毎月社員向けに「こころの勉強会」を開催しています。

こころの勉強会を始めた当初、スタッフからは「勉強会に参加したら時給はもらえるの?」「家でレポート書いてる時間の時給はもらえるの?」など、嫌々モード全開の中でのスタート。しかし、10年間続けてきた結果、徐々に社員の意識が変化が表れてきたそうです。

  • 良い人のところには、良い人は集まる

  • 良い人材が来ないのは、自分自身が悪いこころの持ち主だから

「保育士の時は、良い幼稚園を作ろうと思っていました。でも、どんなに良い幼稚園を作っても、家族や進学した小学校や中学校が良い学校じゃないとダメなんです。社会人になってからも毎日勉強を続ける場が必要だと強く感じたのです。」

「人を思いやる温かいこころを育てるために、毎日勉強する場。美しいこころを作るために、お母さんのために学校を全国に作る!」

「こころの勉強会」で伝えているエッセンスを一部ご紹介します。

  • みんな笑顔、いつも笑顔、笑顔の輪を広げよう

  • もらって嬉しい言葉を使おう

  • 不機嫌は環境破壊

  • 3毒(NGワード)愚痴、不平不満、怒り

  • ありがとうを伝える

  • 「良かった日記」毎日良かったことを10個書こう

  • 「めんどうくさい」からこそ「喜んでやろう」

  • いつも明るく元気

  • 健康へのコミットメント

  • 利他のこころ

  • 素直な気持ちを持とう

  • 持続すること

  • 人生は一瞬一瞬の積み重ね

  • 経営者はお母さん。お母さん自信が成長しなければ子供(社員)は成長しない

アミングの事業の目的は、「人づくり」

商いを通じてこころを磨くための学校を作ること。

また、社員のインタビュービデオでは、様々なメッセージが綴られています。

  • 自分に自信がついた

  • 全てを前向きに

  • 考え方が変わった

  • プラス思考になった

  • ありがとうが普通に言える

  • 常に挑戦したいという気持ちを持つ

  • アミングは人生そのもの

  • 西井社長はアミングという「こころを磨く学校」の校長先生

  • 就活の時に社長の話を聞いて、ここで働きたいと思った

  • 社員はダイヤモンドの原石。磨けば光る。ただし、自分で磨く力を持つ

  • アミングは「こころを磨く学校」。そこで働きながら学んでもらう。

  • お客様から「ありがとう」と言われる幸せ

  • アミングで一緒に働く仲間との出会いが喜び

  • みんな社会人になる前にアミングで3年働いた方が絶対いい

  • 女性はアミングで働くことで子育ての仕方が変わる

■アミングのコアコンピタンス

アミングの強みをマーケティングの視点から少し見てみましょう。

マーケティングを学習する際に、最初に出てくるのがマーケティング・ミックスの4Pですね。

1. Product(プロダクト:製品)

2. Price(プライス:価格)

3. Place(プレイス:流通)

4. Promotion(プロモーション:販売促進)

雑貨店の場合、魅力ある品揃が最優先ですね。例えば、東京の表参道にはたくさんの雑貨店がありますが、商品に特徴のあるお店が人気です。つまり、1番の Product(プロダクト:製品)に強みを持つお店だと言えます。

1. Product(プロダクト:製品)に強みを持つ雑貨店

LOUNGE by Francfranc(ラウンジバイフランフラン)

全国展開しているフランフランのコンセプトショップ。豊富なインテリア雑貨がラインナップ。

フライングタイガーコペンハーゲン

デンマーク発のライフスタイル雑貨ストアで、価格もリーズナブル。オープン当初は行列で平日でも整理券を配布していたほど。

MoMA DESIGN STORES

ニューヨーク近代美術館の監修で生まれた日本第1号店のセレクトショップ。

AWESOME STORE(オーサムストア)

英語で「素晴らしい!」という意味のAWESONE。キッチンやバス・トイレ雑貨をはじめ、アクセサリー、パーティーグッズなど、100円ショップでは物足りない方にピッタリのお店。

2. Price(プライス:価格)に強みを持つ雑貨店

100円ショップのダイソーなどの雑貨店はPrice(プライス:価格)に強みを持つ雑貨店です。最近人気の3COINSは特徴的な雑貨を手がけているので、プロダクトにも強みを持つ雑貨店だといえます。

3. Place(プレイス:流通)に強みを持つ雑貨店

全国の駅ビルやショッピングモールに出展している雑貨店としては、ヴィレッジヴァンガード、ドンキホーテなどがあります。これらはPlace(プレイス:流通)に強みを持つ雑貨店です。

厚生労働省が12月26日に発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.56倍と、実に43年10カ月ぶりの高水準です。全国的に人手不足が続く中、もはや、賃金を上げずに人を採用することは困難です。でも、賃金を上げれば利益が減ってしまいます。

利益を確保するには、原価を抑えるか、売上を増やさなければなりません。売上を増やすには値上げが手っ取り早いということになります。

宅配業者の値上げを機に、値上げのも仕方なしの風潮がやや出てきていますので、少しずつ値上げの動きが出てくるかもしれません。とはいえ、Price(プライス:価格)に注力をしている雑貨店は、安易に値上げをしてしまったら強みを失いかねないという点は代わりません。

さて、アミングはどうでしょう?アミングで販売されている商品は他の雑貨店やネットでも変えるものが大半です。また、値段も100円ショップのように安いわけではありませんね。また、お店は郊外店ばかりで、人通りが多い、駅ナカやショッピングモールのテナントとして入っているお店は少ないです。4Pのどれかに強みを持っているわけではなさそうですね。どこにアミングの強みがあるのでしょう?

ここで、4Pの代わりに4Cで見てみましょう。

1. Customer Value(カスタマー・バリュー:顧客にとっての価値)

2. Customer Cost(カスタマー・コスト:顧客が負担する費用)

3. Convenience(コンビニエンス:顧客にとっての利便性)

4. Communication(顧客とのコミュニケーション) 

アミングでは、徹底した社員教育を行い、社員満足度を高めることが、顧客とのより良い接点、より良い接客・接遇、より良いコミュニケーションにつながる。つまり、社員教育によって顧客バリューを高めていると言えますね。アミングは4Cで強みを発揮する会社だといえますね。

他の企業や雑貨店は当然ながら、4Cの重要性を理解していて、企業のマーケティング戦略を、4Pから4Cへとシフトしようとしていることでしょう。しかしながら、社員教育を短期間で実現し、効果を出すことは難しいのです。全社レベルでの人材教育をするには、毎年の出店ペースを遅らせるなど、人の成長に合わせて企業の成長スピードを抑える必要があります。短期での成果を重要視する企業では、人材を育てることはできません。言い換えると、そう簡単にはアミングの真似をすることはできないということです。

アミングの理念や目的は、売上を上げることではなく、商いを通じてこころを磨くための学校を作ることです。この軸(コアコンピタンス)がぶれない限り、アミングは「働くことによる幸せ」という価値を提供する企業として地域社会に生存し続ける事になるでしょう。

どうですか?アミングに行ってみたくなったでしょう。店舗が近くにある方は、明日にでもアミングの店舗を訪れ、店員さんとコミュニケションを取ってみてください。アミングの理念を感じ取れるか、共感を受けるか、自分自身で体験してみると良いでしょう。

さらっとまとめるつもりが長文になってしまいました。

5年前にイオンモール新コマツの近くにオープンした際に作成されたアミングのビデオがユーチューブに公開されています。西江社長やスタッフのコメントを聞くことができますので、是非ご覧ください。

このビデオの中で西江社長が語っているメッセージをご紹介します。

一人の人としてどう生きるか?

こころを磨く場所はありますか?

自分のこころは自分でしか磨けない 変えることが出来るのは自分のこころだけ

人のこころは磨けないし、変えることも出来ない。

商いというのは、こころ磨きにピッタリの場所 仕事を通してでないと、人間は成長しない

私の夢は、アミングを日本全国に出して、 多くの人がこころを磨き、感謝の日々を送れる人間を育てていく

私たちは蛍のように、小さな光しか出せないけど、 みんなが集まると凄い光になる

そういう光を放ち、周りの人達を暖かくするような人を育てていきたい

そういう場を作っていくことが私の使命

※文中の写真の何点かは、上記、生活雑貨アミング ドキュメンタリー番組 アミングの裏側(YouTube)からキャプチャしたものを引用しています。

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