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答えのない時代のコンサルティング


明快な答えのない時代に、答えを創りだすことが必要になってきている。 今までのフレームワーク化された支援では、

コンサルティングは成り立たなくなってきている。

そのような不透明で、複雑な問題を抱えた時代にあっての、新しいコンサルティングのあり方を、組織心理学の創始者といわれる、現MITスローン経営大学名誉教授のエドガー・シャイン博士が提案されている。

謙虚なコンサルティングの時代だと

ここに書かれていることは、有能なコンサルタントの方々は、すでに感覚的に気付いていることなんじゃないかと思います。

シャイン博士は、コンサルタントが明確な答えを提示することが出来なくなった時代では、コンサルタントがその役目を変えると、書いています。

クライアントが直面している困難に謙虚な気持ちで共感的に向き合い、クライアントと一緒になって、クライアントが自分自身で答えを導き出すための支援を行うことが、コンサルタントの新しい役割です。そしてそのために最も重要になってくるのが、クライアントとの新しい関係づくりです。これまでのように、ほどほどの距離感を保つ関係を超え、「積極的な気持ち」「思いやり」「好奇心」をもって、クライアントと個人的な関係を結ぶことです。これを実現するためには、今までのコンサルタントスキルとは全く違う種類のスキルが必要になります。クライアントとの対峙を、ダイアローグに導くスキルです。その中で、答えのない問題に対して万能な解答がない無いことを理解しながら、答えを見つけ出すための共同作業が始まります。

このようなプロセスにて、クライアントだけでは出来ないことを、クライアントとともに、クライアントのために行うことが、謙虚なコンサルティングです。

重要なポイントを抜き出してみます。 (以下、引用) 〇謙虚なコンサルティングでは、

 クライアントとのあいだにこれまでにない個人的な関係が必要である

〇謙虚なコンサルティングでは、

 初めて言葉を交わす瞬間から新たな対応の仕方が必要である

〇謙虚なコンサルティングでは、これまでとは違う謙虚な姿勢と、  支援したいと思う積極的な気持ちと、好奇心が必要である

〇謙虚なコンサルティングには、

 新しいタイプの聴くスキルと対応するスキルが必要である

〇謙虚なコンサルティングは、

 コンサルタントが担う全く新しい「個人としての役割」である

〇謙虚なコンサルティングによって、コンサルタントは、

 素直で自分を偽らない革新的な関係をクライアントとのあいだに築き、

 その関係を土台にした幅広い対応をすることになる

〇謙虚なコンサルティングは、

 新たな会話がダイアローグになると効果が最大になる

そして、謙虚なコンサルティングの論理(あるいはプロセス)です。

1.確実に支援するためには、本当の問題、すなわちクライアントの懸念が何かを突きとめる必要がある。

2.クライアントの懸念を突きとめるためには、クライアントと支援者が信頼し合い、率直に話ができることが必要である。

3.信頼し合って率直に話をするためには、支援の場でありがちな、ほどほどの距離感を保つレベル1の関係を超え、個人的な話のできる、機能するレベル2の関係を築く必要がある。

4.機能するレベルの関係を築くためには、関係をある程度打ち解けたものにする必要がある。

5.関係をある程度打ち解けたものにするためには、個人的なことに踏み込んだ質問をしたり、より個人的な考えや感情を打ち明けたたりすることによって、謙虚に問いかけることが必要である。

6.レベル2の個人的な関係を築くためには、コンサルタントはその意向を、クライアントを初めて接するときに伝える必要がある。

7.クライアントを悩ませている問題を把握するためには、レベル2の関係を築いてしっかり機能させたのちに、支援者とクライアントは共同で行うダイアローグのプロセスを始めなければならない。

8.クライアントが懸念している問題のうち、有効な解決策が皆無の問題があるかどうかを判断するためには、コンサルタントとクライアントがともに注意深く検討する必要がある。

9.どのタイミングで行動を起こすべきかを判断するには、コンサルタントとクライアントは、優先順位とどんな行動を起こすかを共同で決める必要がある。

10.問題が単純明快だとわかったら、支援者はみずから専門家もしくは医者を担うか、あるいはクライアントを他の専門家か医者に紹介するといい。しかし問題が複雑で厄介だとわかったら、クライアントをと支援者は、「これによって問題が解決されるわけではないかもしれないが、いくらか気持ちが落ち着くし、次のアダプティブ・ムーヴへつながる新たな情報を得られる」ということを理解したうえで、ダイアローグを始めて、実行可能な「アダプティブ・ムーヴ」を探すべきである。

(引用終わり)

ここで使われている「アダプティブ・ムーヴ」ですが、なかなか説明が難しいです。

「問題を特定することができず、万能な解答策もない状態でのアクション」 のようなニュアンスでしょうか。

気になる人は本を読んで下さい。原文がいいかも…笑。

シャイン博士の『謙虚なコンサルティング』の概念は、お解り頂けましたでしょうか?

私がこの20年間で出会った様々な、コンサルタントの方は、基本的には、シャイン博士がおっしゃる謙虚なコンサルタントのタイプが多かったように思います。これは多分、日本という利他精神が定着している国家風土の中では、成立しやすい概念なのではないかと思います。

監訳されている神戸大学の金井壽宏先生が、的確にまとめられているので、再び引用させていただきます。ちょっとくどいかも知れませんが悪しからず。

(以下、引用)

注目すべきは、主語が「クライアント」である点だ。

コンサルタントは自分で答えを出すのではなく、クライアントが自ら道を見いだせるよう支援しなければならない … 中略…。

さらに、今日の組織が直面している問題は、複雑かつ多様かつ不確実だ。ハーバード・ケネディスクールのロナルド・A・ハイフェッツ教授は、解決に必要な知識や技術が自明でない問題を「適応を要する課題」と呼んだ。解き方がわかっている「技術的な課題」であれば専門家や熟練者が問題解決に導くことができる。だが、「適応を要する課題」に取り組むためには、クライアント自身が学習し続けて、ものの見方、世界のとらえ方を変えていく(適応していく)必要があるとハイフェッツ教授は言う。

つまり、今日の組織が直面している「順応を要する課題」においては、コンサルタントをはじめとする外部者がいくら組織を「診断」したところで、問題の本質をつかむのはきわめて困難だということだ。さらには、仮に外部者から優れた解決策が提案されたとしても、内部者(クライアント)は問題を見て見ぬふりをしたり、拒絶したりすることが往々としてある。だから「クライアント」が主語となり、自ら実行する必要があるのである。

自分が手助けすることによって、相手が「気づく」ことに集中する。これが、シャイン流コンサルティング最大の特徴といえよう。コンサルタントや支援者の「問いかけ」や「聴く姿勢」によって、クライアントは自分自身にとって本当に気がかりなことや、これまで目を背けていた大切なことに気づく。この一点に集中することが、「本当の支援」だとシャイン先生は考える。

(引用終わり)

そして、誰かが言っていました。

メンターとは、コーチとカウンセラーとコンサルタントを合わせたものである。

 コンサルタント :実務上の問題解決のサポート

 カウンセラー  :悩みの解決(マイナス思考をプラス思考に)

 コーチ     :技術向上の手助け

シャイン博士の『謙虚なコンサルタント』、なんとなく似ていませんか、メンターの役割に。メンターをビジネスモデル化したものに、近いような気がします。

まるで師匠のようなコンサルタントのお話です。

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